そして今回プーチン大統領はそれらを独立国家として承認し、しかも両「共和国」の領土がそれぞれの州全体であると認めるようウクライナに要求している。
その背景にあるのは、バルト3国におけるロシア系住民への迫害だ。とりわけラトビアは人口の24.4%をロシア系が占めているが、その多くは公務員や正規雇用の仕事に就けず、パスポートも与えられていない。これはロシア国民の多くにとって許せないことであり、ドンバス地域のロシア系住民が同様の境遇になるのを防がねばならないのだ。
しかし、ゼレンスキー大統領はドンバス地域への“挑発”を続け、この問題を深刻化させていた。どんな理由であれ軍事侵攻は絶対に容認できないが、ロシア側からすれば、ゼレンスキー大統領のやり方が無視できない“暴挙”と映っていたことは想像に難くない。
今後プーチン大統領はどこへ向かうのか? ゼレンスキー大統領にどんな打ち手があるのか? 次号でも“ロシア脳”から考察する。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2022~23』(プレジデント社)。ほかに小学館新書『稼ぎ続ける力 「定年消滅」時代の新しい仕事論』等、著書多数。
※週刊ポスト2022年4月1日号