物価上昇の大波が日本に押し寄せている。ウクライナ危機をきっかけに石油、天然ガスといったエネルギー価格や小麦など穀物の国際価格が高騰、国内でもガソリン価格や電気・ガス代をはじめ、パンやマーガリン、インスタント食品から野菜、魚介類などの生鮮食料品、外食からカメラまで値上げラッシュが家計を直撃している。
コロナによる輸送費アップや半導体不足でモノの値段が上がっていたところに、ロシアの軍事侵攻が物価上昇に追い打ちを掛けたのだ。円安の影響も重なった。
政府が発表した今年2月の消費者物価指数は前年比0.6%増だが、先行指標の企業物価指数は9.3%増と41年ぶりの伸びとなった。
この2月分にはまだロシアの軍事侵攻の影響は含まれていない。軍事侵攻で天然ガス価格は2月下旬の侵攻直前の約4倍に跳ね上がった。今後発表される3月や4月の物価統計にそうした影響が反映され、あっと驚く物価上昇を記録する可能性が高い。米国ではすでに消費者物価の上昇が7.9%(2月分)に達しており、日本もいよいよインフレ時代に突入する。
大手銀行の調査部門でキャリアを重ねてきた塚崎公義・久留米大学商学部教授は「企業も消費者も対応が難しい時代になる」として、こう語る。
「インフレにはいろんなパターンがあり、典型的なのは景気が良くてモノがどんどん売れるのでみんなが強気になって値上げをする。しかし、今回は原油高で物価が上がっており、値上げ分がそのまま日本企業の利益になるわけではない。企業はコストが高くなった分を値上げしなければ損をしてしまうし、企業が値上げした分は消費者が困っている。
そのうえ、日本人は心配性だからインフレになるとお金を使わない。老後が心配だと節約して貯蓄に回してしまう。貯蓄率が高いので即、生活危機にならないかもしれないが、財布の紐を締めてモノが売れなくなり、結果的に企業の売り上げが落ちて失業率が高くならないか心配です」