「学生の要求には極力すべて対応」の方針
こうしたモンスター学生は、コロナ禍によって一層目立つようになった面もあるようだ。私立大学の教員Dさん(40代男性)が語る。
「私の勤務先は、定員割れギリギリの地方私大です。全学部の教授会では、近隣の大学にいかに受験者を奪われないようにするかという話がよく議題に上り、その打開策として大学が掲げたのが、コロナ禍での『学生の要望には極力すべて対応する』という方針でした。たとえば、『YouTubeの動画だとオンライン講義が楽しめる』という学生アンケートの結果をもとに、高齢の教員も含め『できる限りYouTubeに授業動画をアップしろ』と指示があった。
また、基礎疾患を持っていると主張する教員に対しては、『ゼミは対面と決まったので、必ず対面で実施し、授業満足度を下げないようにすべき』とのお達しがありました。大学教員は何でも屋ではないので、すべて学生の意向を汲むことなど不可能なはずです。学生は『自分たちが学費を払っているんだ』と権利を主張しているのでしょうが、大学進学は義務ではありません。
コロナで不安な気持ちや、大学への不満があることも理解できますが、学問以外の部分での苦情には、大学は一定程度、毅然とした態度を取るべきではないでしょうか」(Dさん)
定員割れする大学が相次ぐなか、コロナ禍が拍車をかけ、苦境に立たされる大学が後を絶たない。受験者数の減少は大学経営の大きな痛手であり、ある程度「お客様」を満足させる必要もあるのかもしれないが、それが過剰になることで、学問の場としての大学の意義が揺らぐことも懸念される。大学全入時代に向けて、大学のあり方があらためて問われている。