キャリア

盛田昭夫さんが語った「新しい部署に行ったら自信満々でいろ」の真意

元ソニーCEOの出井伸之氏が振り返る

元ソニーCEOの出井伸之氏が振り返る

 井深大氏とともにソニーを創業した盛田昭夫氏は、独自の働き方哲学を持っていた。それを盛田氏から直接学んだのが、元ソニーCEOで現在84歳の経営者である出井伸之・クオンタムリープCEOだ。新刊『人生の経営』が話題の出井氏が、盛田流キャリア論を振り返る。

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 会社って、実は可能性の宝庫なんですね。皆どこかで、定年までのルートが決まっているのが会社員だと思っていますが、それは大きな間違い。会社員の社歴は“ワン・アンド・オンリー(唯一無二)”で、本人次第でいくらでも変わっていく。

 ソニー時代、僕の秘書だった女性が諸般の事情で「会社を辞める」と言い出したことがあります。辞めるのはもったいないから、「今までとは関係のない部署で働いてみたら?」と提案して、彼女は「生産管理」に異動することになりました。しばらく経って、「どう?」と聞いてみたら、「こんな面白い仕事がソニーにもあったんですね」って、失礼なことを言うんです(笑)。彼女はその後、また秘書部に戻って、秘書のトップになりましたけどね。生産管理に精通している秘書ってカッコ良くないですか?

 このように、会社は可能性の宝庫です。だから、どんどん手を挙げて越境すればいい。部署を替えて、新しい仕事に挑戦するのは、“起業”に近いと思いませんか。

 今の会社を辞めて起業すれば、何もかもリスクを自分一人で背負わねばなりません。しかし、サラリーマンなら会社が楯になって守ってくれる。サラリーマンだからこそ冒険できるのです。さまざまな経験を積むことによって、自分のバリューを高めていくこともできるのです。サラリーマンは、冒険ができる素晴らしい職種なんですよ。

 ずっとサラリーマンをしていると、自分がいる環境が当たり前になってしまって、気づかないものですが、大企業でサラリーマンというのは経済的にも法律的にも、ベンチャー企業にいたら得られないさまざまな恩恵を受けています。その恩恵を受けながら、ベンチャー起業家のように社内で起業する、あるいは社内で転職するというのは、ローリスクで大きなリターンを得られるということです。

 だから、むしろ積極的に“社内起業”“社内転職”しないと損だと思います。50代、60代でもまだ間に合います。この年代になると、サラリーマン人生の先が見えてきますが、見えてきたからこそ、一念発起して、レールからはずれてみてもいいのではないでしょうか。

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