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ソニーの海外進出、盛田昭夫氏は「すべて任せる」と“若造”出井伸之氏を派遣した

「3人がそれぞれ指示された国に行って、現地法人を作ってこいと言うのです。本当に『えっ?』て感じですよ。僕はまだビジネス経験の少ない“若造”だったんですから」

「3人がそれぞれ指示された国に行って、現地法人を作ってこいと言うのです。本当に『えっ?』て感じですよ。僕はまだビジネス経験の少ない“若造”だったんですから」

必死になれば泳ぎ方は覚えられる

 海外法人を作るときも、その国のインサイダーになれという考え方が貫かれていました。

 なにしろ、僕なんて、フランスに行く時点で、ソニーを退社した扱いになりましたからね。うちの母から電話がかかってきて、「あなた、何か悪いことでもしたの? 退職金の積立が打ち切られているわよ」と言われて気づきました。

 これには正直驚きました。ソニー本体を離れるわけですから、処遇としては正しいのかもしれませんが、会社の命令で海外に行くんですからね。退路を断つというか、「会社ってここまで追い立てるのか」と。いきなり海に放り出されたような気分でした。

 でも、人間って不思議なもので、放り出されたら泳ぎ方を知らなくても必死に泳ごうとして、いつの間にか泳ぎ方を覚えるんですね。フランスでは、大学や大学院で学ぶ数百倍の経験をさせてもらった。ソニーの文系の花形部署は「外国部」「財務部」「業務部」で、東大卒やMBA卒ばかりでしたが、東大やMBAで学ぶことの何十倍も僕はパリで学んだと思います。

 これもサラリーマンだからこそ、できた経験です。会社だからこそ、大きな仕事を任される。自分で興したベンチャーだったら、絶対にそんな経験はできなかったでしょう。

※出井伸之著『人生の経営』(小学館新書)より

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