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「企業年金のルール変更」で損する人と得する人 老後の資金計画をどう建て直すか

経過措置はあるが…

 企業型DCには、掛け金が事業主負担、社員負担(選択式)、事業主と社員が負担(マッチング拠出)するパターンがある。

 制度改正でDC枠が減らされた場合、現行の事業主負担が減る分は給料に上乗せしてもらえるのか。また、掛け金の運用は社員が信託銀行や証券会社などの商品から運用先を選び、原則、60歳まで引き出すことができない。改正後はこれまで積み立てた分はどうなるのか──など、対象の社員にとっては不安が大きい。厚労省に聞いた。

「現在DBの掛け金が大きく、なおかつDCを限度額の2万7500円まで掛けている企業の社員が改正によっていきなり大きな影響を被らないように、経過措置が考えられている。その企業が企業年金制度の変更を行なうまではDBもDCの掛け金も現行のままでよい。制度変更で事業主拠出額の変更が必要になった場合は、基本的に労使で協議することになる。積立金はそのまま運用できます」(厚労省年金局企業年金・個人年金課)

 DBは社員に約束した予定利率に達しなければ、差額を会社が負担しなければならないため、見直しが必要になるケースは少なくない。経過措置があっても、いずれ制度変更による企業年金減額の日がやってきかねない。どうして“退職金減額”につながるような制度変更が必要なのか。

「今回の改正は不公平を是正するのが目的です。DBと企業型DCの掛け金合計が5万5000円未満の会社であれば、改正後はDC掛け金を上積みできるようになる。掛け金の枠が減る対象者より、枠が増える対象者のほうが多い。一概に給付減につながるとは考えていません」(同前)

 企業年金を運用しているみずほ銀行の担当者もメリットをこう説明する。

「DBを導入している会社の約90%は掛け金2万7500円以内で、DCの掛け金を減らさなければならない企業は限られている。むしろ、制度の見直しによってDCの掛け金を増やすことができる企業のほうが増えると考えております」

 会社が企業型DCへの拠出を増やせば、将来、社員の企業年金は増えることになる。

 制度改正で自分の会社がデメリットを被るのか、それともメリットを受ける側なのかは会社の担当部署に確認したい。

 とはいえ、企業型DCの枠が拡大する企業でも、会社側が負担増になる年金拠出を簡単に増やすとは考えにくい。

 年金や退職金制度に詳しい社会保険労務士の北村庄吾氏が語る。

「企業型DCを導入している会社の社員1人あたりの拠出金(掛け金)はせいぜい月1万円程度が多い。DB(厚労省試算は掛け金平均1万3691円)を併用する企業でも拠出金の合計が限度額に満たないケースがほとんどです」

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