コロナ禍で休業、閉店が相次いだ外食産業。2021年の市場規模はコロナ前(2019年)の83.2%まで縮小している。そうしたなかで、各社、生き残りをかけて様々な戦略を展開している。
国内に約1100の店舗を構えるファミリーレストラン大手のサイゼリヤ。コロナ禍に見舞われた2020年8月期の国内外の売り上げは前年比19%減と大きく落ち込んだが、今期は70億円の黒字に転じる見込みだ。背景には、これまでの“常識”を見直す店舗改革があった。
国からの時短営業要請が解除され、他のファミレスが閉店時間を23時に戻すなか、サイゼリヤは「深夜営業廃止宣言」を打ち出し、22時で店を閉める(一部店舗を除く)。低価格なワインやおつまみがウリで、「サイゼ飲み」と親しまれてきたにもかかわらず、なぜ深夜営業廃止なのか。外食ジャーナリストの中村芳平氏が分析する。
「サイゼリヤには、のんびり昼飲みに訪れる中高年層が顧客として定着しており、深夜まで深酒するような会社員などはターゲットから外れてくる。それゆえ、コストのかかる深夜営業はむしろやめても大丈夫という判断なのでしょう」
コロナを受けて2020年には「手書き注文用紙」を導入。言葉のやり取りを最小限にしながらも、タッチパネルなどは導入せず、接客スタッフが直接注文用紙を受け取るシステムになっている。
あえて従業員と客が接触する場を残していることについて、堀埜一成社長は〈サイゼリヤは注文を聞く、料理を運ぶ、皿を片付けるなどを接客スタッフが行うフルサービスのレストラン。接客の部分は省けない〉(2022年3月4日・ITメディア)とこだわりを見せている。
変化させる部分とさせない部分をどう織り交ぜていくか。そこに生き残りのカギがありそうだ。
※週刊ポスト2022年4月22日号