蔭山さんが解説する。
「社長の話したことは忘れるかもしれませんが、エンジンを吹かした音とにおいを肌感覚で覚えておいてほしい、というメッセージでした。この粋なスピーチによって、新入社員たちに愛社精神を植えつけることに成功したはずです」
トヨタは世界有数のグローバル企業だけに、トップの言葉は海外でも注目される。
アメリカでトヨタ車がリコールされる逆風に見舞われた2010年には、豊田社長がアメリカ議会の公聴会に出席して、毅然とした態度で証言した。
「その際、ケンタッキー州の工場で現地従業員や関係者と会合を行ったときは、激励の声をかけられて豊田社長が涙ながらに現状を報告しました。あのスピーチには共感するアメリカ人が多く、トヨタに対する風当たりがガラッと変わりました。スピーチは時として分断を生みますが、統合を招く手段でもあるのです」(蔭山さん)
※女性セブン2022年4月21日号