3月15日、カナダ議会のオンライン演説では、カナダの各地域の都市や名所を織り交ぜ、「想像してほしい」と訴えた。
《想像してほしい。午前4時にあなたや子供たちが恐ろしい爆発音を聞くことを。想像してほしい。夜明け前のオタワ空港や多くのカナダの美しい場所を巡航ミサイルが爆破して、子供たちに抱きつかれて「何が起きたの?」と聞かれることを》
《毎日、死者に関する報告を聞くことを想像してほしい。死者数は増え続けている。今朝の時点で97人の子供が殺された》
蔭山さんが指摘する。
「ロシア軍による攻撃の実態を伝えて、『私に起こったことがあなたにも起こったらどうなるのか。想像してください』と繰り返し語りかけることで、ウクライナの人々がリアルに感じていることをカナダの人に感じさせようとした。歴史に残る迫力のスピーチでした」
3月16日にアメリカ連邦議会で行われた演説では、詰めかけた議員にこう語りかけた。
《「私には夢がある」。この言葉を、あなたがたはみな知っています。今日、私が言えるのは次のことです。「私には必要がある」。それは、私たちの空を守ってくれること。あなたがたの決意、あなたがたの支援です。それはまったく同じことを意味しているのです。あなたがたが感じていることと同じです。あなたがたが「私には夢がある」という一節を聴くときのように》
「米国の黒人公民権運動を率いたキング牧師の有名な一節『私には夢がある(I have a dream)』を引用しつつ、『私には必要がある(I have a need)』という自分の主張に変えて支援を要求しました。
ダメなスピーチは賢人の言葉を無意味に引用するだけで終わりがちですが、ゼレンスキー氏は引用を踏まえて自分の言葉に変えた。非常によくできた演説でした」
世界が熱い視線を送るゼレンスキー大統領は、大国ロシアの武力に「言葉の力」で立ち向かっている。
※女性セブン2022年4月21日号