物価は上昇局面だが、4月から年金支給額は引き下げられた。厚生労働省は、現役世代の賃金が減ったことを受けて、年金支給額は0.4%引き下げとなることを発表している。
インフレの長期化が予想されるなか、こうした“年金減額時代”が続くと考えられ、こちらの対策も急務となる。折しも今年は、複数の年金新ルールがスタートするタイミングである。新制度をどう活用していくのがいいのか。「年金博士」としてお馴染みの社会保険労務士・北村庄吾氏が解説する。
「例えば、年金を65歳よりも早く受け取る『繰り上げ受給』の減額率は、1か月前倒すごとに0.5%減だったのが、0.4%減に緩和されるルール変更となりました。60歳受給開始にする場合、30%減額だったのが24%減額で済むということです。ただ、それだけ聞くと“繰り上げ受給を選びやすくなった”と思うかもしれませんが、実際には判断が難しい」
北村氏によれば、繰り上げ受給を選択する人はこれまでも少なくなかったが、その後、減額した年金を受け取り続けるなかで後悔の念を抱く人が多いのだという。
「男性と女性で平均寿命に違いがあるし、夫婦のどちらが年上かといった要素でも判断は変わってくる。ただし、65歳以降も働き続ける人が増えているという前提に立つと、60代前半であえて年金を受け取ることのメリットは限定的になっていくでしょう。
むしろ、1年繰り下げて66歳受給開始にすれば年金額は8.4%増える。そうやって“ちょっと増やす”という選択のほうが現実味が増してくる。60歳を過ぎた私も、今は“1年繰り下げ”を選択肢として考えています」(北村氏)