従業員が新型コロナウイルスに感染したり、濃厚接触者になったりしたときの対応は、企業によって様々だ。もしも企業の対応が、従業員にとって不利なものだった場合、受け入れるしかないのか──。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
新型コロナの濃厚接触者に。国が濃厚接触者でも、自宅待機せずに出社してもよいとの決定をしたのに、いまだに会社は1週間の自宅待機を強制します。しかも、その間は有給休暇にしてほしいとの通達。ならば、待機期間の賃金を補償してほしいです。これから会社と、どのような話し合いをすべきですか。
【回答】
濃厚接触者は、保健所が調査して個別的に該当するかどうかを判断。濃厚接触者になると、一定期間、不要不急の外出は控えるよう求められます。職場でコロナ感染が起きるのを防ぐため、会社が出社を認めないのも理があることです。
ところで、使用者には雇用契約により、従業員に労務提供の機会を与える義務があり、自宅待機は労務の提供を受けないとの申し出になります。法的には労働者が提供した労働債務の履行の受領の拒否です。使用者は労働の対価として賃金を支払う義務があり、正当な理由なく労務提供の受領を拒否した場合には、民法の原則から労働者は賃金請求権を失わず、使用者は賃金全額を支給する義務があります。
しかし、本人が病気で働けない場合や、就業させると伝染病に感染させる恐れがあって就労させない場合、会社の感染防止対策不十分を原因とする職場感染の発生や、その虞があれば別ですが、会社に責はなく、補償がないのが普通です。濃厚接触者と認定された従業員が自宅で業務ができなければ、自宅待機の間は無給です。