そこへいくと、パチンコはとても率がいいように見えるが、みんながそんなに勝っているようにも思えない。
「1玉の単価は4円ですが、換金率は店や地域で違いますし、1人が1日に何万発も打つため、正しい確率計算ができないのが実情です。3%は、控除率の予測値(平均値)でしかありません。言えるのは、一生勝ち続ける人はいないということ。レジャーにお金をかけるのと同様、ギャンブルも“楽しみ代”と割り切った方がいいでしょう」
ギャンブルをするうえでの御法度は、「負けを取り戻そうとする賭け方」だという。
「海外のカジノでは、負けるたびに賭け金を倍にすれば1回の勝利で取り戻せる『マーチンゲール法』という考え方がありますが、これは、やり続ければいつか大負けします。こういうタイプはカジノ側にとっては“おいしいお客”です。逆の発想として、勝っているときはトライしていい。負けても惜しくないタイミングで勝負するのです。たとえば私は、100ドルが200ドルになったら、勝った半分(50ドル)をポケットにしまい、また200ドルになったら50ドルをしまうようにして、150ドルがなくなったらやめます」
パチンコや公営競技にも応用できる。予算を決め、負けてもつぎ込まないのが鉄則だ。
「“負け方を知る”ことが重要です。たとえば、バブル崩壊で失敗した人の多くはエリート層でした。彼らは学歴や出世競争でも負けを知らなかった人たちですから、1000万円つぎ込んだ株が損を出しても『自分に限ってそんなはずはない』と、すべて失うまで投資を続けたのです。ギャンブルは、リスク計算と確率のゲームですから、投資する価値がないと思った時点で身を引くことが肝要です」
一方、ポーカーや麻雀、バックギャモンなどスキルを問われるゲームは、運ではなく、実力のある人が勝つという。ちなみに、ジャンボ宝くじについては、1等に当たる確率より、交通事故で死亡する確率の方が300倍以上高いという計算もある。「ほぼ当たらない」ものと心得て、束の間の夢を楽しむ娯楽の1つと考えるのがよさそうだ。
【プロフィール】
谷岡一郎さん/大阪商業大学学長。社会学者。アミューズメント産業研究所所長。著書に『悪魔の証明──なかったことを「なかった」と説明できるか』(ちくま新書)など。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2022年5月5日号