いまだに出口の見えないコロナ禍で、特に打撃が大きい飲食店などでは、多くの人が失業に追い込まれる状況が続いている。なかには賃金が支払われず生活に困窮する人もいるというが、もしそんな状況に陥ったらどうすれば良いか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
小さな居酒屋でアルバイトをしていましたが、新型コロナの影響で店を休業するという理由でクビになりました。そのときに、「給料に加えて退職金代わりに10万円プラスして支払う」という約束をしましたが、いまだに振り込まれません。問い合わせると、「月末に払う」などと言い訳をしながら支払ってくれず、最近は電話にも出てくれません。給料の未払い分だけでも支払ってほしいのですが、どうしたらよいですか。(神奈川県・40才・主婦)
【回答】
クビになったとのことですから、任意の退職ではなく解雇されたという前提で考えます。解雇する場合には、使用者は30日前に予告するか、予告をしない場合には30日分以上の平均賃金を支払わなくてはなりません(予告手当)。
「給料に加えて退職金代わりに10万円プラス」の意味が、
【1】実際に働いた分の給料と10万円を支払う
【2】予告手当として1か月分の給料に10万円プラスして支払う
どちらの意味かはっきりわかりませんが、給料が未払いとのことですから、【1】だと思います。その場合、まずは10万円が予告手当として充分な額かどうか確認してください。労働者の賃金と予告手当は、労働基準法などで手厚く保護されています。退職した労働者に未払い賃金があるときには、使用者は、完全に支払うまで年率14.6%の遅延損害金を支払う義務があります。
さらに労働者は、賃金と予告手当の支払いを裁判で請求せざるを得なくなった場合、判決に至るまで支払おうとしない使用者に対して、未払いの予告手当の額と同額の付加金も合わせて支払うよう請求できます。