新型コロナの発生から2年が過ぎ、「どこに住むか」の判断にも大きな変化が生じている。総務省が1月末に発表した昨年分の「住民基本台帳人口移動報告」によれば、東京23区から出ていく人(転出者)の数が、入ってくる人(転入者)の数を1万4828人上回った。東京23区から出ていく人のほうが多い「転出超過」となるのは、「同じ方式で統計を取り始めた2014年以降で初めてのこと」(総務省統計局統計調査部国勢統計課人口移動調査係)だという。
背景にはリモートワークの普及や感染拡大が長引く地域を忌避する姿勢があるとみられている。
もともとあった定年退職やセミリタイアの後の「地方移住」願望にコロナ禍が拍車をかけたようにも見える。地方移住に詳しい生活経済ジャーナリスト・いちのせかつみ氏が言う。
「コロナもそうですが、人生100年時代という言葉が登場して、地方に移り住みたいという相談が増えた印象が強いです。80歳で死ぬなら今の自宅に住み続けるけど、そこから何十年も人生が続くなら、人の温かみが感じられる土地に引っ越したいという希望が多い。“田舎は人のつながりが深い”というイメージが根強いのでしょう」
ただ、“脱・東京”の流れに乗って、いいイメージだけを膨らませていると、移住が失敗に終わりかねないという。
「夢ばかり抱いて、チェックすべき項目を疎かにすると、ギャップに苦しむことになります。家からスーパーまでの距離はどのくらいか、都市ガスではなくプロパンガスになって使い勝手はどうなるのかなど、移住前には細かい確認が必要で、思い描いた暮らしがそのまま実現するわけではないと理解しないといけない。
そのうえで、移住した地域に受け入れてもらおうとする姿勢がいちばん重要です。とくに男性は苦手な人が多いのですが、周囲の住人に挨拶して回り、地域の行事や祭りには積極的に参加する。草刈りなども“義務”としてとらえるのではなく、みんなと楽しくクラブ活動するくらいの気持ちが大切です。そうして地域住民に受け入れられて初めて、移住が成功したという話になる」(同前)
そうした振る舞いに自信がない人は、一度立ち止まって考え直したい。