志望校合格のために勉強に明け暮れる人が大半の大学受験。だが、近年では推薦入試での入学者も増えている。文部科学省の資料によると、2000年度から2020年度の20年で、総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜の推薦入試で入学した学生の割合は33.1%から48.8%に増加した。大学入学者の半分が推薦入試という時代になっているのだ。では、推薦入試で大学に入学した人は、その後の人生にどのような影響があるのだろうか。かつて推薦入試で大学に合格した30代女性に思いを聞いた。
「私は高校も大学も推薦で入ったので、一般受験の経験がありません。あるとすれば就活の時でしょうか。自分で言うのも何ですが、コスパが良い進路だったと思います」
そう語るのは、公立高校から最難関私立大学に指定校推薦で合格し、現在は金融機関に勤める30代女性・Aさんだ。中高時代は何事にも積極的な子供だったという。
「中学時代は生徒会会長と吹奏楽部、高校時代は吹奏楽部での活動に青春を捧げました。中学の成績は体育以外オール5、高校は評定平均4.8でした。コツコツ勉強するのは好きだったので、定期テストも特に苦痛ではありませんでしたね。高3時の模試ではMARCH(明治・青学・立教・中央・法政)に合格圏内レベルでした」(以下、Aさん)
Aさんが推薦にこだわってきたのには理由があった。大学受験で志望校合格のために2年浪人した経験がある兄からの言葉が大きい。
「兄が『一般だろうが推薦だろうが、入学した者勝ち』と言っていたんです。私もどこに入るかよりも、どこでもいいから浪人したくないと思ったので、まずは推薦狙いで、学区トップ校ではなく2段階くらい低い近所の学校に絞りました。学年での成績は常にトップ5以内を維持し、校内選考を無事通過。合格できた時はホッとしました」(Aさん)
大学入学後、Aさんは真面目に学生生活を送った。
「私の成績次第で後輩の推薦枠がなくなると困るので、大学でも真面目に講義に出ました。留年や中退はもってのほかで、推薦枠が消滅することもあるそうです。一般受験の人は、普通に講義をサボる人も多くてびっくりしました。授業では、レポートは問題ありませんでしたが、英語力は一般受験の人より劣っていたと思います。行った大学にもよると思いますが、やっぱり、高校3年生の時に学校内のテストしか受けていないのと、競争で磨かれた学力には開きが出るのかなと思いました。私は周りの優秀な人たちに負けないように、大学では体育会のマネジャーとして選手をサポートしつつ、会計と英語の勉強をがんばりました」(Aさん)