「GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック=現メタ、アップル)」に代表される巨大ITプラットフォーマー群は、コロナ禍においても大きな収益を生み続け、その存在感はますます高まりつつある。その一方で、「そうした収益に見合う税金を納めていないのではないか」という国際的批判も高まり、いわゆる「デジタル課税」に関するルール作りが進み、世界的な“プラットフォーマー包囲網”は狭まりつつある。
なによりそれら巨大テック企業の商材は「ネット上の無形資産」であり、簡単に国境を越えられるため、税金の安い国に収益を移すようなこともたやすく、それが「租税回避」と指摘されることもあった。日本で日本人を顧客とした大規模なネットビジネスを展開しているにもかかわらず、日本での納税実績がほとんどないような状態であれば、違和感を覚える人は少なくないだろう。
そうしたなかで、日本ではどのようなスキームでプラットフォーマーへの課税を進めようとしているのか。これまでの歩みを解き明かしていくと、日本ではまだまだデジタル課税のルール化が進んでいない実態も浮かび上がってくる。
たとえば、日本国内に目に見える拠点として巨大な配送センター(倉庫)を持つアマゾンを例に見てみよう。財務省出身で『デジタル経済と税』などの著者である東京財団政策研究所研究主幹の森信茂樹氏が説明する。
「日本で事業を行なう外国企業に日本が課税権を発動するためには、課税の根拠となるPE(恒久的施設)がなければ課税できないという国際ルールがあります。その中で『倉庫はPEに当たらない』とされていて、日本で法人税を課税することはできなかった。
しかし、2007年に国税局が調査したところ、アマゾンの配送センターは“ハイテクのかたまり”で、本社から業務の指示があるなど単なる倉庫以上の業務が行なわれているのでPEと認定され、課税処分を行なったとされています。ただ、この処分にアマゾン側は納得せず、日米税務当局間の相互協議となり、日本側の主張はあまり認められず、法人税はわずかしか負担していないといわれています」
このビジネスモデルについては国際社会でも大きな問題として検討され、OECD(経済開発協力機構)がBEPS(税源浸食と利益移転)に対処するべく立ち上げたプロジェクトでも「人為的にPEの認定を逃れることを防止するために、租税条約のPEの定義を変更する」ことが勧告された。
日本もこの勧告に従って税制改正を行ない、アマゾンの倉庫を“実質的に判断”してPEと認定できるようになったが、これはあくまで国内の法改正。いまだ日米租税条約は改定されていないので、アマゾンの倉庫を実質的にPEとして課税することはできていない。