一方、あなたは実家の近くに住んで、お母さんの面倒を見ていたとのことですが、被相続人の面倒を見ても、親子の間で普通に見られる日常の世話程度では、「特別の寄与」ではなく、寄与分は認められません。しかし、付添人を雇うような「療養看護」であれば、付き添い費用の実費、相続人やその配偶者などが自ら療養看護すれば、日当相当額を基準としたうえ、ある程度減額した額になると思います。これは財産の維持に貢献したと考えられるからです。寄与分の有無や額は、争いになれば遺産分割の前提問題として家庭裁判所に決めてもらう必要がありますが、例示したような貢献があれば、交渉の材料になります。
弟さんが1400万円と大きな金額を要求するのは仏壇を持つからという理由です。しかし仏壇は祭祀財産であり、遺産分割とは無関係ですし、祭祀の承継者として仏壇を持つ以上、そのための諸費用が生じてもそれは祭祀を引き継いだ者の責任であり、遺産分割には影響しません。
実家の不動産も3人で合意しないと売却は不可能です。また建物も無人のまま時間が経つと劣化します。早期に家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員などからの説得を期待するのがよいと思います。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座、B型。
※女性セブン5月12・19日号