パンや惣菜、お菓子に飲料水まで、食品のパッケージ裏を見れば多数の添加物名が羅列されている。なんとなく体に悪そうだから──そんな理由で、同じ食品でも「無添加」と書かれていれば、ついついそちらを手に取ってしまう人も多いはず。だが、今後それはできない。国を挙げて「無添加」の表記を消したのだ──。
パッケージの変更が不可避
健康志向の高まる現代社会にあって、時代に逆行するガイドラインと言うほかない。
消費者庁は3月、「食品添加物表示制度」の改正を発表。誤解を招く恐れのある食品表示の10類型を列挙し、それらを規制する方針を示した。
この類型のひとつとして、食品メーカーは今後、商品パッケージに「無添加」の表記を使用できなくなり、「着色料不使用」など「○○不使用」の文言を目立つ形で使用することも禁止される。
適用されるのは今年4月以降の製造分から。なぜこうした制度改正が行なわれたのか。食品ジャーナリストの郡司和夫氏が指摘する。
「食品表示法は加工食品に保存料や着色料などの添加物を使った場合は商品パッケージに記載するよう義務付けていますが、『無添加表示』や『○○不使用』については規制が曖昧でした。『国が認めた添加物は安全』という前提に立つ消費者庁は、一部メーカーが『無添加』や『不使用』を全面的に打ち出すことは、“添加物を使っている食品は危ない”という誤解を招く怖れがあると判断した。そうした誤解を防ぐためのガイドライン策定です。
多数の添加物を使用する大手食品メーカーが、他社の『○○不使用』という表記にクレームをつけた例が過去にあります。そうした企業ほど、今回の改定には賛同しているはずです」
一方で、無添加を売りにしてきた食品メーカーには混乱が広がっている。
「商品パッケージの変更を余儀なくされる上、中小の食品メーカーは販路が閉ざされる懸念があります」(郡司氏)