コロナ禍で失われていた人の集まりが元に戻りつつある。そうしたなかで再び活性化するのが新宗教の動き──。新宗教はメディアを通じて、そのパワーを見せつける。新宗教の発信力について、宗教雑誌『宗教問題』の小川寛大編集長がレポートする。
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創価学会の機関紙『聖教新聞』の公称発行部数は550万部。これはすでに、朝日新聞の発行部数448万5000部を超える数字である。
聖教新聞の月間購読料は1934円(税込)なので、年間の購読料収入は約1276億円という計算になる。
また、昨年の年間ベストセラー(トーハン調べ)の第1位は、幸福の科学・大川隆法総裁の著書『秘密の法 人生を変える新しい世界観』(幸福の科学出版)だった。世界的ベストセラーの『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著、新潮新書)や、芥川賞受賞作品『推し、燃ゆ』(宇佐見りん著、河出書房新社)を抑えての堂々第1位であり、発行部数は85万部を超えているという。
大川氏が、月に数冊もの猛ペースで本を書き続ける人物であるのはよく知られた話。主著の『法シリーズ』は総発行部数2000万部を超え、著作全体では4500万部とも、9000万部ともいわれる。
これらは特に目立つ例だとしても、ほとんどの新宗教は新聞や雑誌を発行し、また教祖の本などを出版して、信者たちに購読させている。
天理教や大本(大本教)といった、幕末・明治期に誕生した新宗教の教祖たちの多くは、彼ら自身が特殊なパワーを持つ、一種の超能力者だったとされる。彼ら教祖が周囲の人々にパワーを与えることで、病気が治るなどの評判が相次ぎ、その集まってくる人々の輪が、宗教団体となった。
ただし、このスタイルは教祖が布教の最前線に直接出て行かなければ成立しにくく、規模の拡大が一定の範囲にとどまるなどの“制約”が生じる。
この状況を変えたのが、生長の家創始者の谷口雅春氏だった。大本教の幹部だった谷口氏は、早稲田大学英文科で学んだインテリ。1930年、『生長の家』という名前の雑誌を発行して、自らの教団を立ち上げる。谷口氏は、自分の書いた文章を読めば人生が好転する、病気が治るといったことを主張。実際に、事業に成功した、死から生還した、などといった読者が数多く現われ、生長の家を大きく発展させていく。