彼の主著『生命の實相』シリーズは、累計発行部数1900万部といわれる大ベストセラーである。そうした谷口理論に心酔した人々が、今なお生長の家を源流とする保守系市民団体・日本会議を強力にリードしている現実などもあるのだ。
創価学会や幸福の科学をはじめとする、新宗教の出版ビジネスは、基本的にはこの谷口氏の手法の後に続くものだ。
ライバルはインターネット
新宗教の出版ビジネスは、信者からの“集金”以上の意味も持つ。例えば創価学会は全国の新聞社に聖教新聞の印刷を委託し、多額の費用を支払っている。また幸福の科学はじめ、教祖の著作などが出版されると、多くの教団は新聞などに大きな宣伝広告を掲載する。新宗教がラジオ広告を好むのは昔からあった傾向だが、近年ではゴールデンタイムのテレビに、新宗教のCMが登場することもしばしばだ。
現在、オールドメディアの不況が叫ばれるなかで、新聞社やテレビ局に流れるこうした新宗教マネーをメディア側は拒否できない。報道のなかに、いわゆる「新宗教タブー」が形成される一因である。
当然、書店にとっても、教祖の著作などが出版されるたび、多くの信者がまとめ買いなどをしてくれる構図は歓迎せざるをえない。今では大抵の大規模書店には、新宗教関係書籍の専門コーナーが存在する。
また、教団関係の出版事業は、信者の“統制”にも一役買う。創価学会の池田大作名誉会長は、ノーベル平和賞をいつもらってもおかしくない世界の偉人であり、幸福の科学・大川総裁は国難の時代の救世主で、世界の著名人と守護霊を介して交信できる──少なくない信者は、このように信じている。