新規より“繋ぎ止め”
ほかに立正佼成会の佼成学園(東京)や、今春のセンバツに出場した金光教の金光大阪、創価学会の創価(東京)、関西創価(大阪)も強豪だが、PLなき今、新宗教系学校随一の野球名門校といえば奈良の天理だろう。
天理では野球部に加え、柔道部、ラグビー部が天理スポーツ三兄弟と呼ばれ、いずれも全国レベルの強豪である。
団体名が市町村名となっている天理市は天理教からの寄付金が市の財政を助けてきた歴史があり、一時は年40億円を超えた。ところが、平成に入ってからは信者の数に比例して減少傾向にあり、2020年度には3億円に。今年度はいよいよゼロになるのではないかと噂された。天理市の並河健市長はかつて筆者の取材に、こう語っている。
「ゼロにはなりません。寄付金だけが市と天理教の協力体制ではない。スポーツに力を入れる天理高、天理大の存在によって市が発展してきていますし、市民の健康づくりや教育面でも、今後より協力関係を厚くしたい」
現代でスポーツ活動に新たな「信者獲得」の役割を担わせるのは、難しいのかもしれない。むしろ現役信者を激励し、彼らの健康促進を支える目的が窺える。つまり「信者の繋ぎ止め」にこそ、新宗教のスポーツ戦略は活用されているのだ。
そうしたなか、一般市民に最も近しいスポーツといえる「ランニング=駅伝」で創価大が快挙を達成したことは、「新宗教とスポーツ」の置かれた現況を象徴する出来事なのかもしれない。
【プロフィール】
柳川悠二(やながわ・ゆうじ)/ノンフィクションライター。1976年、宮崎県生まれ。大学在学中からスポーツ取材を開始。近著に『投げない怪物 佐々木朗希と高校野球の新時代』
※週刊ポスト2022年5月20日号