「遅らせるほどお得」とは言い切れない
自分の力でしっかり稼ぎながら、うまく繰り下げれば年金も多く受け取れる。ならば、公的年金はできるだけ遅らせて、受給額を最大の184%まで増やした方がお得だと感じるかもしれない。
だが、仮に上限ギリギリの75才まで働くことができたとしても、増えた年金をそこから何年、受け取り続けることができるだろうか。
アラフィフ女性専門ファイナンシャルプランナーの深川恵理子さんは「寿命は誰にもわからないもの。75才まで繰り下げても、万が一、76才で亡くなったら、元も子もありません」と指摘する。
2020年の厚労省の簡易生命表によれば、現在、日本人の平均寿命は、女性が87.74才、男性が81.64才。年々延びてはいるが、これはあくまで平均の話だ。寿命は一人ひとり違うし、重要なのは“お金の寿命”を人生の寿命よりも長くすること。
「年金額が増えると、税金(所得税・住民税)と社会保険料(国民健康保険料・介護保険料)も増えるため、手取り額は思ったほどは増えません。一度繰り下げの手続きをすませると、取り消しや修正はできず、決まった増額率での年金を受け取り続けることになる。
特に女性は、2人に1人は90才を超えて長生きする確率が高いといわれているので“長生きはリスク”と考えて、公的年金の受給は計画的にすべきです」(深川さん)
受給を遅らせて年金額を増やすのか、それとも、受給額が減っても、早めに受け取る方がいいのか、現状と将来の両方を考慮して選んでほしい。
※女性セブン2022年5 月26日号