住まい・不動産

不動産バブルでも慎重に…高齢者の「自宅売却」が簡単ではない事情

年代別の「持ち家比率」(2018年住宅・土地統計調査結果/総務省統計局)

年代別の「持ち家比率」(2018年住宅・土地統計調査結果/総務省統計局)

二度と我が家には戻れない

 折よくと言うべきか、コロナ禍の昨今、「不動産バブル」により住宅価格が上昇し、あちこちから「今が売り時」との甘い囁きも聞こえてくる。多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏が言う。

「昨年度、首都圏の新築マンションの平均価格が高騰し、バブル期のピークを超えました。一方、コロナ禍でリモート勤務が普及し、自然豊かな郊外や地方の物件にも注目が集まった。しかし、不動産バブルとはいえ、都市部は高騰しても地方はそうではなく、地域格差が拡大しています。

 たしかに東京・三田や中野、三鷹、埼玉など、地価が上がったエリアにある自宅を売却し、それを元手に地方の安い物件を手に入れて移住したいという人は意外に多い。彼らには今が売り時と感じられるのでしょう」

 総務省の統計(2018年)によると、高齢者の「持ち家率」は約8割に達する。すでに住宅ローンを払い終わっている人が「不動産バブル」に乗じて自宅を売却できれば、大きな金額を手にできる幸運が待っているかもしれない。しかし、果たしてそう簡単な話なのか。

 長嶋氏は、高齢期の自宅の売却には「多くの罠が潜んでいる」と語る。

「自宅の売却は不動産業者に仲介を依頼し、価格を査定してもらうことから始まります。この最初の不動産業者選びの成否によっては自宅売却が老後資産の計画を狂わせるリスクが伴うし、高齢になって新たな環境に住むことには不安もあるでしょう。住居は老後生活の“要”と言っても過言ではないので、ご家族でよく相談してほしい」

 甘い響きにつられて住み慣れた我が家を手放せば、二度と戻ってくることはない。慎重に考える必要がある。

※週刊ポスト2022年5月27日号

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