ロシアのウクライナ侵攻の影響で、ロシアに進出していた外資企業も難しい舵取りを迫られている。今後、外資企業はロシアでの事業展開をどう模索していくのだろうか。経営コンサルタントの大前研一氏が、ロシアに進出する企業の身の振り方について考察する。
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ウクライナ戦争が長期化・泥沼化し、ロシアに進出している外資企業が続々と現地事業の停止・撤退を表明している。
そういう中でロシア軍の侵攻直後の3月初め、ユニクロなどを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が「衣服は生活の必需品」「ロシアの人々も生活する権利がある」「ロシアの人々が日本に悪感情を持つことがいいことなのか」などと述べ、日本経済新聞で事業を継続する方針と報じられた。それに対し、ツイッターなどで批判が殺到。すると同社は一転してロシアの全50店とEC(電子商取引)サイトを休止すると発表し、情勢判断の甘さや対応の遅れを指摘された。
だが、誤解を恐れずに言えば、柳井氏が言っていることは100%正しい。
ファーストリテイリングのホームページや「Yahoo!ニュース」で掲載されたファッションビジネス・ジャーナリストの松下久美氏のレポート【※】などによると、柳井氏は4月14日の2022年8月期第2四半期決算発表の場で「私はあらゆる戦争に強く反対する。人々の人権を侵害し、平穏な生活を脅かす、いかなる攻撃をも非難する」とした上で「国は分断されても、企業は分断されてはいない。むしろ分断を解消し、お互いの理解と融和を深めるのが企業活動だ」と強調した。
【※〈増収大幅増益のユニクロ柳井社長、ロシア、中国ゼロコロナ、インフレ・値上げ、円安、成長、社会貢献を語る〉クミコム代表・松下久美/4月14日付】
そして営業停止の決定については「いろいろな面で事業継続が困難になった。商品が着かない、あるいは紛争が非常に激しくなったことなどを総合的に判断した」と説明し、その判断は「遅れてはいない」と強調。さらに「私たちの服の産業は平和産業だ。人々の暮らしをより豊かに楽しく快適にする産業だ」「私たちの使命は、快適な普段着を継続的に人々に提供することにある」と持論を展開した。
ちなみに、ファーストリテイリングはウクライナへの人道支援としてUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に1000万ドル(約13億円)を寄付し、毛布やインナー、防寒着など20万点を周辺国に逃れたウクライナ難民に提供している。