失踪宣告(普通失踪)とは、生死不明の者を法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度で、所在不明が7年以上続く人などが対象となる。
「失踪宣告が認められて遺産が相続できたのは、最初に弁護士から“祖父が(戸籍上)生きている”という話を聞いてから1年半くらい経ってからでした。30万円ほどの費用がかかり、叔母の遺産である預金には触れない状態だったので、私たちの預金から払っていました。どう考えても生きているはずがないのに、こんなに時間とお金がかかるとは思いませんでした」
Bさんはそう嘆いたが、同様の「所在不明高齢者」による相続トラブルが、次々と発生するとみられているのだ。
とにかく遺言書を用意
相続に関連した「失踪宣告」が相次いでいることを報じた読売新聞(5月8日付朝刊)によれば、失踪宣告の申し立ては〈昨年4月からの1年間に120歳以上だけで50人に上った〉という。
そもそも、国内最高齢者より年上の人が“戸籍上は生きている”という話に違和感を覚えるかもしれないが、最高齢者はあくまで国が所在を把握している人ということだ。
2010年には東京・足立区で戸籍上は生きているはずの111歳男性(当時)がミイラ化した状態で見つかったことをきっかけに「所在不明高齢者」の問題が注目を集めた。亡くなった男性の年金を受給し続けるために家族が死亡届を出さなかった事件だが、その後、長崎県では作曲家・ショパンと“同い年”の200歳男性が戸籍上は生きている扱いになっていたことも明らかとなった。どこかで身元不明のまま亡くなり、戸籍がそのままになっていた可能性などが考えられるのだ。