当時は所在不明の高齢者が「年金」との関連で注目されたが、それが「相続」の手続きと絡んでもトラブルになるのである。『トラブル事例で学ぶ 失敗しない相続対策』の著書がある相続コンサルタントの吉澤諭氏はこう説明する。
「故人が遺言書を残していない場合、所在不明の相続人が1人いたら相続手続きが進みません。相続人全員の実印が揃わないと遺産分割が完了しないからです。見つからないままだと、家庭裁判所に『不在者財産管理人』の選任を申し立てることになりますが、選任された弁護士などが所在不明の相続人が相続すべき遺産を管理するかたちとなるため、その報酬などがかさんでいきます。
遺産にアパートなどがあれば、賃料の一部を渡さないといけないし、売却も建て替えも自由にできない。それでは話が進まないので、並行して所在不明の相続人の失踪宣告を申し立てるという流れになるわけです」
トラブル急増という自体を防ぐために何が必要か、議論を急がなくてはならないだろう。
※週刊ポスト2022年5月27日号