預貯金があってもダメ
妻と死別し、賃貸アパートへの転居を検討している60代男性が語る。
「不動産業者は親身に相談に応じてくれるものの、大家が首を縦に振らないケースばかり。これまで20件近く断わられ続けています。いずれも、年齢と独り身であること、現在の収入が年金のみという点がネックになっているそうです。長年会社勤めをしてきて、預貯金も年金収入もそれなりにあるのに、まさかこんな目に遭うとは……」
不動産ジャーナリスト・榊淳司氏はこう指摘する。
「高齢者が入居を断わられる際には、賃貸住宅の契約で普及した家賃の保証会社の審査ではねられるケースも少なくありません。収入が公的年金しかない場合、将来的に賃貸料が払えなくなる可能性があると機械的に判断されてしまうようです」
戸建てからの住み替えではないが、なかにはこんなケースもある。70代男性が言う。
「5年ほど前、30年以上住んでいたアパートが老朽化のため解体されることになり、立ち退きを求められました。70歳を過ぎてからの転居なので、入居できる物件は限られてしまい、ようやく契約できたのは、駅から徒歩20分で築40年以上の木造アパート。ところが、こちらも“終の棲家”とはならなかった。最近になって取り壊しが決まり、今年いっぱいで部屋を明け渡すよう通告されてしまったのです。もう次の行き場所を探す気力もありません」
様々なリスクや困難が伴う選択となるわけだが、それでも賃貸物件を探す必要がある場合は、どうすればいいのか。前出の山下氏はこう助言する。
「不動産業者が賃貸物件への受け入れに消極的になるのは、70代以降の高齢者といわれています。60代であれば、受け入れてもらえる可能性はそこまで低くないはずなので、将来的に賃貸住宅への転居を考えているなら、早めに行動に移すのが得策です」