総務省の「住宅・土地統計調査」(2018年)によると、全国に空き家は約848万戸あり、そのうち放置状態にあるものはおよそ347万戸とされ、年々増え続けている。
空き家問題に詳しいオラガ総研代表の牧野知弘氏は、空き家が放置される理由についてこう語る。
「人件費や解体費用の高騰により、30~50坪の家でも解体するのに150万~200万円くらいかかる。更地にして売れればいいが、地方だと10万円でも売れないということはザラにあります。
更地にすると固定資産税が上がってしまうという問題もある。住宅1戸につき200平米までの住宅用地なら『住宅用地の特例』という制度により、固定資産税が最大6分の1、都市計画税が最大3分の1まで減額されます。空き家を解体すればこの制度が適用されなくなるため、税金が高くなる。年10万程で済んでいた固定資産税が、年40万~50万円くらいになってしまうのです(※注/固定資産税、都市計画税の税率は自治体によって異なる)」
都心部の不動産なら売りようもあるが、田舎の実家は“負動産”と呼んでもいい状況なのだ。
しかし、手間もお金もかかるからと放置すると、さらに面倒なトラブルを呼び込むことがある。相続手続カウンセラー協会の米田貴虎代表に、実際に起きたトラブル事例を訊いた。
「四国在住の60代男性のケースですが、ある日しばらく放置していた実家を見に行ったら、知らない中年男性が暮らしていたというんです。『所有者なんですけど……』と声をかけようにも、向こうがあまりに堂々としているので怖くなってしまった。関わりたくないし、そもそも資産価値のない家なので、持ち主の男性は“しばらく考えないでいたい”とそのままにしてしまっていました」
※週刊ポスト2022年5月27日号