離れて暮らす親が亡くなった時に生じうるのが、「実家の処分」という問題だ。空き家となった実家をそのままにしていると固定費の支払いに追われるだけでなく、予期せぬトラブルに巻き込まれることもある。相続手続カウンセラー協会の米田貴虎代表はこう語る。
「空き家となってしばらく放置していた実家に他人が侵入するケースは決して少なくありません。誰かがカップラーメンを食べた跡があるとか、ガラスを割られていたとか、物が盗まれていたとかはよくあります。
人間ではなく動物が住み着くパターンもある。視察に行った淡路島の一軒家では、2階の窓から猫が5匹くらい顔を出していた。中に入ると20~30匹は住み着いているようで、床は猫の糞だらけ。凄い臭いがしました」
犯罪に利用されるケースまである。
「近所の人に“外国人が出入りしている”と聞いた所有者から、『怖いので一緒に見に行ってくれ』と頼まれた。庭に何かのタネがたくさん捨てられていて、なんだかおかしい。中に入ると、天井にスプリンクラーが取り付けられ、大麻の栽培が行なわれていた。警察に相談したが、捜査員たちが踏み込む前に外国人らは逃走してしまいました。幸い、その家は立地も悪くなかったので、無事に売れました」(米田氏)
空き家で起きるトラブルとしては、ゴミの不法投棄、不審者の侵入に放火など、様々なパターンがあるが、面倒事を引き起こすだけでなく、所有者には金銭的な負担も重くのしかかってくる。ファイナンシャルプランナーの牧野寿和氏が指摘する。
「300平米の土地に建つ一軒家で、仮に課税標準額が建物600万円、土地が2000万円とすると、固定資産税が年に約14万6000円かかることに加え、都市計画税が4万5000円かかります(※)。庭の草木が伸び放題だと近所から苦情が出ますから、庭木の剪定や巡回サービスを利用するとして、年に約20万円。そうすると、税金と維持管理費の合計で、年間約40万円の負担になります」(※注/固定資産税、都市計画税の税率は自治体によって異なる)