【書評】『エブリシング・バブルの崩壊』/エミン・ユルマズ・著/集英社/1760円
【評者】森永卓郎(経済アナリスト)
1年半ほど前から、私は米国株がバブル状態にあることを警告し続けてきた。しかし、その後も順調に上がる株価に、私はオオカミ少年の扱いになった。ところが最近になって、米国株価の崩壊を予言する本が、何冊も出されるようになった。なかでも、本書の現状認識は、私の見方と非常に近い。
まず、いまの米国株の株価売上倍率は3倍で、適正とされる1倍と比べて極端な高値だと著者は言う。バフェット指数やシラーPERといった他の割高指標で見ても同じことが言えるので、米国株が異常に高いことは間違いない。しかも、本書のタイトルでもある「エブリシング・バブル」が生じている。株式だけでなく、石油や小麦や木材など、あらゆる商品が大きく値上がりしているのだ。
そうしたことの原因は、リーマンショック以降、世界に広がった金融緩和で低金利の資金が大量に供給されたことだ。その資金が投機に向かっているのだ。また、著者の指摘で重要なのは、借金をして投機をする、あるいは借金をして自社株を買うといった「てこの原理」を使った手法がまん延していることだ。そうやって生じたバブルは、いずれ大崩落を起こす。しかも、崩壊は間近だと著者は主張する。高インフレに耐えかねたアメリカが、急速な金融引き締めに舵を切ったからだ。