「贈与分は相続に関係ないと思い込んでいる人が多いですが、相続には『3年以内の贈与加算』という制度があり、亡くなる3年前までの贈与は“直前の相続税逃れは無効”として相続税の対象になります。税理士なら知っているはずですが、相続人に確認していない場合が多いようです」(同前)
さらに勘違いしやすいのが「へそくり」だ。
「税務調査で多額の現金が見つかり、それを専業主婦である妻が『へそくりです』と言ったらアウト。妻が生活費をやり繰りして貯めたお金でも、故人の財産に含めなければいけません。口座から頻繁に引き出していた記録などがあると、へそくりの存在が疑われることが多いようです」(岡野氏)
丸裸にされるのは現預金だけではない。実家の相続にあたり土地の評価額が最大8割減となる「小規模宅地等の特例」を利用しようと住民票を慌てて実家に移すケースがあるが、「税務調査では相続人の生活拠点がどこか確かめられるうえ、水道光熱費のメーターまで調べられる。同居の実態がないことはすぐにバレます」(岡野氏)という。
申告時点で漏れなく済ませるのが理想だが、予期せぬ調査の連絡が入ったらどう対応するべきか。
「相続税専門の税理士に改めて相談するのがいいでしょう。調査前に申告済み相続税の見直しや調査の事前準備、質疑応答のリハーサルなどをしてもらえます」(同前)
こうした事態に陥らないように、適切な相続を進めなくてはならない。
※週刊ポスト2022年6月3日号