そしてもう1人“天敵”になりそうなのが、中国の習近平国家主席だ。経済ジャーナリストの後藤逸郎氏が解説する。
「いまは保有している株が軒並み下がっている状態ですが、近い将来さらに大きなリスクとなるのが今回9000億円以上の損失になった配車サービスの滴滴出行(DiDi)に象徴される中国株です。孫さんは以前から地政学的リスクを考慮せず“中国は伸びる”という考えでどんどん投資してきたが、中国当局の規制による滴滴の大暴落で中国企業に対する出資の成功パターンは崩壊した。
さらにグループの保有資産の22%は中国ネット通販大手のアリババの株式です。2000年に20億円を投資し、約20年で10兆円近くの含み益を得た最大の成功例ですが、アリババの“一本足打法”は非常にリスクが大きい」
孫氏が将来性に惚れこみ、数分で巨額の投資を決めたという逸話があるアリババも近年は中国当局のハイテク企業取り締まりのターゲットになり、創業者のジャック・マー氏が「当局批判」後に一時、姿をくらますなど先行きは不透明だ。
こうした不安が現実のものとなれば、ソフトバンクGはかつてない苦境に追い詰められる。
「いまはまだ大丈夫ですが、問題は個人投資家やメインバンクなどの機関投資家にそっぽを向かれた時です。彼らが『これ以上ついていけない』と判断する状況になると、ソフトバンクGは終わってしまう。いまはその瀬戸際にあると思います。
巨額の投資をしてマーケットと表裏一体の企業になった以上、将来的な経営破綻の可能性は十分にある。ただ孫さんはネットバブルの崩壊を見てきているので、それは理解しているはず。だから会見で『守りに徹する』と繰り返し語ったのでしょう」(大西氏)
※週刊ポスト2022年6月3日号