〈世界は混沌としており、株式マーケットも大きな影響を受けた。我々が取るべき行動は「守り」です〉。5月12日、オンラインで開催されたソフトバンクグループ(以下、ソフトバンクG)の決算発表会見。記者から「今後の方針」について問われた孫正義社長(64)は、厳しい表情でそう答えた。
ソフトバンクGの2022年3月期連結決算(国際会計基準)は、純損益が1兆7080億円の赤字となった。前期は国内企業で過去最高となる4兆9879億円の黒字だっただけに、市場関係者には少なからぬ衝撃が走った。
一転して記録的な大赤字へと転落したが、ソフトバンクGの“本業”は絶好調だ。会見前日に発表された携帯電話事業の中核子会社・ソフトバンクは売上高、営業利益ともに過去最高を記録。営業利益は9857億円とあと一歩で1兆円に手が届くところまで来ている。
なぜ、好調な携帯事業がありながら減益になったのか。その原因は、2017年に「10兆円ファンド」として鳴り物入りで立ち上げた投資事業「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」にある。
今年に入ってから米国の利上げ方針やロシアのウクライナ侵攻を受けて、ソフトバンクGの投資先企業の株価が急落したことで巨額の損失を計上。昨年の決算発表時は26.1兆円あった時価純資産(※)は、18.5兆円となり、たった1年間で約7兆6000億円も減少してしまった。
【※投資会社や投資ファンドが企業の価値や業績を評価する際の指標で、時価で計算した資産総額から負債を差し引いた金額のこと】