このように、銀行のサービスを比較検討して決めたわけではない人は多い。しかし、このままなんとなく使い続けていては預金が減ってしまういま、前出の上念さんは、「もうメガバンクはいらない」と言い切る。
「なぜなら、いまのメガバンクにはお金を“創造する機能”がないからです。極端な言い方をすれば、お金の量を増やすのは日銀だけでなく、民間の銀行にもできます。“創造”とは紙幣や硬貨を造ることではなく、企業や個人への融資を増やすこと。日本全体に存在する貨幣の量のことを“マネーストック”と呼びますが、このマネーストックが増えれば、世の中にお金が行き渡り、景気がよくなります。メガバンクが融資に積極的になれば、このマネーストックを増やせるのです」(上念さん・以下同)
しかし、バブル崩壊以降、メガバンクは「貸し渋り」を続けている。資産をたっぷり蓄え、貸しても確実に返してもらえるような大企業にしかお金を貸していないという。
「いまのメガバンクは、お金持ちにだけやさしい。中小企業の実績や将来性を審査する能力が低くなっていると思います。リスクを負おうとしないメガバンクに存在価値はないと思いますね」
と、手厳しい。さらに、起業家もメガバンクに期待しなくなってきていると続ける。
「昨今の若くて能力のある起業家は、資金をクラウドファンディングなどで集めて成長しています」
ひと昔前のように、会社や家から近いなど、何も考えずにメインバンクを選ぶ時代は終わった。利用する側がきちんとサービスやメリットを比較検討し、必要なければ、“使わない”という選択肢があってもいい、というわけだ。