コロナ禍で外食産業は大きなダメージを受けた。そうしたなかで各社の決算の中身を見ていくと、同じようなサービスを提供しているにもかかわらず、業績に差が出ている業界もある。
牛丼業界はコロナ禍でテイクアウト需要が伸びたが、店内飲食が減り、他の飲食業より傷は軽いとはいえ、2020年はすき家、吉野家ともトータルでマイナスになった。2021年はすき家も吉野家もプラスに転じたが、そこに差が出ている。日本金融経済研究所代表理事の経済アナリスト、馬渕磨理子氏が言う。
「結論から言うとすき家の強さが明らかです。業績で見ると2022年2月期の連結で吉野家の営業利益は24億円の黒字浮上となり、今期の見通しも34億円ですが、経常利益で見ると前期156億円の黒字が今期は54億円に下がる見通しです。利益の伸び悩みが見られる。
一方のすき家はゼンショー全体で見ると、前期の営業利益が92億円でしたが、今期の見通しは250億円と2.7倍です。経常利益も231億円で増収増益です」(前出・馬渕氏)
ゼンショーの回復が圧倒的に早いという。理由は何か。
「好調の要因は、商品開発にあると見ています。既存の商品も変わらず人気で、『ほろほろチキンカレー』などの新商品の魅力や打ち出し方もよい。吉野家の懸念材料は投資キャッシュフローでみれば、51億円から3億円に大きく投資額を落としていること。
それに対してゼンショーは、235億円から315億円と増やしています。伝統を守ることも大事ですが、吉野家も先行投資して挑戦していくべきではないでしょうか」(同前)
ここから吉野家の巻き返しはあるのか。
※週刊ポスト2022年6月10・17日号