田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国で急成長する“宝石古美術のネットオークション企業”のビジネス戦略

創業7年強で大きく事業を拡大

 ここで、微拍堂の事業内容について整理しておこう。扱う商品は、翡翠・真珠などの宝石、工芸作品、古銭切手、陶磁器、お茶・酒・滋養健康食品、書画彫刻、文芸雑貨、盆栽・花卉・鳥・魚・ペットなど8分類、75種類。2021年12月末現在、売り手側の登録者数は33万1900件、登録ユーザーは7415万人で、2021年12月期のGMV(流通取引総額)は405億元(7695億円、1元=19円で計算、以下同様)。売上高は当局の売り手側への規制強化などの影響があり9%減収の9億7827万元(186億円)に留まったが、粗利益率の改善、販売関連費用の節約などから純利益は163%増益の1億4154万元(27億円)となった。売上高純利益率は14%もあり、かなりの高収益企業である。

 創業からわずか7年強で、同社はなぜここまで事業を拡大することができたのだろうか。

 まず、業界としては画期的な無条件の返品を保証していることが大きい。仮に偽物を掴まされたと思った場合は、返品すればよいという安心感がある。続いて鑑定サービスのためのプラットフォームを設置し、消費者サービスを充実させている。また、ライブ販売を2016年から導入、興味のある顧客には商品の材料や品質、価値など細かい説明もできるシステムを作った。部門別売上高をみると、63%が手数料、10%が年会費。これらがプラットフォームを通じて発生する収入だが、そのほか25%がAIを駆使した営業支援サービス収入である。

 ネット販売である以上、どうしても対面販売と比べて消費者が低年齢化する。同社の扱う商品はどちらかといえば年配の方に人気のある商品であり、ネットを介した取引はビジネスのうえで不利に思えるが、同社は逆に若年層を新規開拓のターゲットとし、AIを駆使した営業支援サービスを徹底させ、宝石古美術の良さをアピールした。業者側が若者向けにおしゃれなデザインの商品を扱うなど顧客に寄せた販売戦略を採るようになったこともあり、Z世代(1995年頃~2009年頃に生まれた世代)を中心に需要を大きく拡大させている。

 テンセントをはじめ、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタルから複数回にわたり資金を調達できたことも、短期間で事業規模を急拡大させることができた要因だ。

 もちろん、消費者の不満がないわけではない。共同富裕を促進させる政府は消費者保護を強化しており、当局による規制が事業の急成長を妨げている部分もある。しかし、そうした厳しい規制をクリアしようとするからこそ、事業の質が上がり、長期的にはそれが成長につながるといった面もあるだろう。

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