中国ではゼロコロナ政策に伴う消費の落ち込みが激しく、マクロ面からみれば経済活動が停滞しているかのような印象を受けるかもしれない。しかし、ミクロ面を細かくみると、少し様子が違うようだ。企業の生態環境が大きく変化する中で、新しい環境に適した企業が台頭しつつある。景気の水面下は停滞ではなく、激変している。その一例を見てみよう。
2014年12月に創業した宝石古美術などのネットオークションを手掛ける微拍堂は5月25日、香港証券取引所に目論見書を提出、IPO(新規上場)まであと一息に迫っている。
中国には宝石古美術などを専門に扱う店舗を集積した大規模なモール(古玩城)が各地にあるが、微拍堂はその売り場をそのままネット上に移管したような企業である。全国から加盟店を集め、テンセントの小程序(ミニプログラム:ダウンロードの必要のないアプリ)上において、それを消費者につなぐ場を提供している。
売買はオークション(競売:顧客同士が競い合って価格を決定する)形式。日本のサービスでたとえれば、“特定分野の商品だけを専門に扱うヤフオク!”といったイメージだ。
消費者にとって、宝石古美術などは、価格設定が標準化されていない商品であり、一つ一つの価値の評価が難しい。また、偽物をつかまされるリスクも相対的に高い。サービスを成立させるためには売り手側に大きな信用が必要だ。子細に商品をみたり、触ったりすることで、初めてその商品の良し悪しがわかるような部分もある。つまり、こうした商品の取引をインターネットを介して行うのはハードルが高い。
多くの日本人からすれば、中国製品は偽物が多かったり、いわゆる“ぼったくり”も多いといったイメージがあるだろうが、筆者の知る限り、中国人だって同じように思っている。そうした中国市場において、こうしたリスクの極めて高いと思われる商品までインターネットで売られ、それが大きな市場となっていることに中国ネット文化の進化を読み取ることができる。