40代で2億円の資産を築いた個人投資家で『攻めの節約』の著者である生方正さんは、人は急に身の丈に合わない大金を手にすると、余分な支出で結局お金を失うことになりがちだと話す。
「例えば、勢いで高級車を購入しても、満足感が得られるのは最初だけ。休日しか運転しないのに、駐車場代、ガソリン代、車検、保険、税金……と、バカにならないランニングコストを払い続けることになります。せっかく得た大金を使いこなせておらず“死に金”にしてしまう典型的な悪い例です」(生方さん)
米コーネル大学の経済学者ロバート・フランクは、所得や社会的地位、車や家など「他人との比較で満足が得られるもの」を「地位財」、愛情や健康など「他人に関係なく、それ自体に価値があるもの」を「非地位財」とした。フランクによれば、地位財で得られる幸せは一時的なものである一方、非地位財で感じる幸せは長続きするという。
他人との競争や見栄の張り合いのためにお金を使ったところで、それは「死に金」。いつまでたっても幸せにはなれないというわけだ。
自分のお金の使い方が身の丈に合っているかどうかは、「仲のいい5人を思い浮かべる」ことでわかると、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは言う。
「『つるみの法則』といって、年収や生活水準、好み、考え方などは、よく行動を共にする5人の平均が、自分にもっとも近いとされています。ようは、類は友を呼ぶということ。例えば、背伸びしてお金持ちグループに入ったり、学歴が自分より異様に高い集団に入ったりしても、居心地が悪い。これは、その人たちの水準は、自分の身の丈に合っていないということ。地位財を比べて苦しくなるだけです。周囲の水準に合わせるためのムダな出費が止まらなくなるでしょう」(黒田さん)
どんなに大金があっても、見栄を張るために使っていては、幸福度は下がる一方で、それは「死に金」だ。
一緒にいて心地よい人を思い浮かべ、自分に見合った暮らしやお金の使い方がどれくらいか見当をつければ、少なくとも「見栄のための出費」を減らすことにつながるだろう。