金銭的な事情が許すのであれば、再チャレンジに向けて留年するメリットはある。仲間とともに学生生活を送ることで、肌感覚でその年の就活の動向を知り、リアルタイムで情報交換できるからだ。
その一方で、心理的な面から留年は避けたいという人もいるだろう。現在都内の国立大学4年生で、志望企業にすべて落ち、すでに来年の「就活再チャレンジ」を決意したKさんは、「留年すると、企業から“ダメなやつ”と思われないだろうか」と懸念しているという。Kさんは、「新卒」カードを使いたいために、卒業ではなく、親の了承のもと「半分休学、半分留年」という道を選んだ。そう決めたものの、企業からどう見えているのかは大きな不安材料だと漏らす。
企業側は休学/留年をそこまでマイナスに捉えない
実際、就活を再チャレンジする学生に対し、企業側はどう受け止めるのか。千葉商科大学准教授で働き方評論家の常見陽平氏は「今は、休学や留年イコール即ネガティブな見方はしなくなってきてはいる」と言う。
「留年に関しては、学生が、あえて単位を残し、ポジティブに留年する『戦略的留年』という言葉もあるほど。人事もそういった風潮があることは把握しているので、休学や留年そのものを最初からマイナスに捉えることは基本的にありません。重視するのは、なぜ休学/留年したのか、そこから何を学んだのか、という部分です。
休学/留年した理由が何であれ、その期間自分としっかり向き合い、それをどのように意味づけるか。そして学んだことをどう相手に前向きに伝えるかが大事になってきます。ただし、面接官によって受け取り方は当然異なるので、この辺りは“縁”の要素も大きく関わってきますね」(常見氏、以下「」内同)
一方で、就活を再チャレンジする場合、“自分の変化”だけに意識を向けるのは危ういとも指摘する。
「採用試験を、今年は自分を出せなくて失敗したけど、もう一度チャレンジしたら上手くいくのではないかと、まるでスポーツの試合や検定のように捉える学生がよくいます。でも、大事なのは、自分だけでなく社会や会社も変化していることを、きちんと捉えられているかどうか。本人が就職までの時間をどう過ごすかということに加え、その会社が来年も同人数、同じ基準で採用するとは限らない。また、社会情勢だってどう変わるかわからないことは念頭に置く必要があるでしょう」