不動産業に関しては、開発面では依然として厳しい規制が残っているが、一方、不動産ローン金利について、最優遇貸出金利を下回る低金利を容認するなど、需要面からの支援策が打ち出されている。
今後、家電や旅行需要などの刺激策や、インフラ建設投資の拡大、さらに一歩進んだ金融緩和など、多方面から五月雨式に政策が出てくるだろう。そうした期待が、中国株の地合いを好転させている。
今後の見通しだが、政策だけでは株価上昇は続かない。結果として景気の段階的な回復が確認されてこそ、息の長い上昇トレンドが形成される。中国共産党は、今年の目標成長率について5.5%前後としているが、この目標が達成できるかどうかが相場の大きな焦点となりそうだ。
中国において国家が決めた数値目標は努力目標ではない
その一方で、IMF(国際通貨基金)は4月の時点で、1月の成長率見通しを0.4ポイント引き下げて4.4%とするなど、欧米系のエコノミストたちの予想は厳しく、5.5%近い予想を出しているエコノミストは皆無である。もしいたとしたら、もはや見識を疑われるような状況だ。だが、本当に達成の可能性は限りなくゼロに近いのだろうか。
中国の経済システムは日米欧とは異なる点が多いが、その点について、彼らはあまり考慮していない。彼らはあくまで、自由主義体制下での経済システムを分析するためのツールを用いて予想している。
中国にとってゼロコロナ政策は純粋な感染対策ではなく、目標成長率は、自由な経済活動の中で政策支援が加わることで達成されるであろう予想成長率などではない。これらはあくまで政治的な政策、目標だ。
経済運営に関して言えば、中国はれっきとした社会主義国家である。現在でも五か年計画が重視されるなど、経済運営において計画は重要な意味を持つ。国家が決めた数値目標は単なる努力目標ではなく、その達成には政治責任が伴う。
経済運営に関しては、国家政策によって供給や需要をコントロールできる、あるいはしなければならないとする立場を取っており、日米欧の経済運営システムとは相いれず、主流の経済政策理論からはかけ離れている。日米欧の立場は、はっきり言えば、政府による経済への関与には限界があり、過度な関与はしないといった立場である。
計画を重視した旧ソ連では崩壊後、大規模な統計の水増しが行われていたとする研究がある。だから、結局中国も同じようなことをせざるを得ないのではないかといった懸念も出ている。しかし、今の中国社会は多様性に富んでおり、虚偽の統計をある程度見抜くことのできる優秀で正義感が強くかつ発信力のあるエリート層が一定数存在する。習近平政権は統計の不正を厳しく戒めているが、それはそうしたエリート層が不満を持てば社会が一気に不安定化しかねず、体制維持のために欠かせないからであろう。