田代尚機のチャイナ・リサーチ

ロシア株が反転上昇、ルーブル高に 経済制裁の効果が相殺される理由

ロシア株が反転上昇している背景は(モスクワ証券取引所。AFP=時事)

ロシア株が反転上昇している背景は(モスクワ証券取引所。AFP=時事)

 米国株市場を見るとNYダウが1月に付けた過去最高値をピークに下落基調が続いているが、その一方で足元でリバウンド基調を強めている指数がある。ロシアの株価指数、RTS指数である。

 2月中旬から急落、2月24日(終値、以下同様)の段階では742.91ポイントの安値を付けている。1か月の取引停止を経て3月28日には823.04ポイントの二番底を付けたが、その後は上昇、4月の押し目を経て5月23日は1253.69ポイントで引けている。二番底からは52%、大底からは69%上昇している。

 2月のRTS指数急落はもちろんウクライナへの侵攻が原因であり、米国を中心に欧米各国が厳しい制裁を科したからだ。しかし、その後、株価は反転、急騰している。ロシアの大手銀行などを国際決済網であるSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除することで、米国はロシア経済を金融面から崩壊させるのではなかったのか。

 ルーブルの対ドルレートの動きにも驚かされる。

 2月16日(終値、以下同様)には1ドル=75.25ルーブルであった為替レートはウクライナへの侵攻、欧米の金融制裁発動を経て3月7日には143ルーブルまで急落した。この時点では確かに、ロシア経済は強烈な輸入インフレ、供給不足から経済は破壊的な影響を受けるのではないかと予想された。しかし、その後は一転、上昇し続けており、5月23日には57.87ルーブルまで買われている。この水準は、ウクライナへの侵攻直前どころか、約4年ぶりのルーブル高である。

 なぜルーブルは上昇するのか。その理由は残念ながら欧米による金融制裁には十分な効果はなく、逆にロシア側に有利に働いた部分もあったからだではないか。

 ロシアといえば、BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)の一角であり、2000年代から投資先として大きな注目を集めた国の一つである。当時はグローバリゼーションが全盛の時代であり、欧州はロシアとの間で、経済取引を大きく拡大させた。その結果として、欧州各国はロシアから大量の天然ガスを輸入する長期契約を結ぶようになった。

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