今年も「株主総会」のシーズンがやってきた。経営に不安を抱える企業は株主からの厳しい質問に対応しなくてはならない。後継に指名した人物をわずか10か月で更迭した日本電産の“辞められないカリスマ”に対しては、どんな質問が飛ぶのか。【前後編の前編】
「後継者として私の上を行ってくれるのは彼しかいないと思う。私もサポートしながら二人三脚で取り組みたい」
昨年の6月22日、日本電産の永守重信会長(77)は「株主総会」での“人事報告”を終えた後の記者会見で、こう高らかに語った。だが、6月17日に控える今年の株主総会ではこんな批判の声が飛びそうだ──。
「たった1年で戻るなんて話が違うじゃないか! 永守さんはもう80歳近い。後継者問題についてどう考えているのか」
──昨年の株主総会で、日本電産は経営の舵取りを担うCEO(最高経営責任者)の椅子を永守氏から関潤社長(61)に譲ることを発表。永守氏は、会長職として「工場を回ったり人材育成に取り組んだりしていきたい」などと語っていた。
永守氏が翻意したのは、今年の4月だった。決算発表の場で関氏のCEOの職を解き、自身が“復帰”すると語ったのだ。
同時に発表された日本電産の売上高は前年比18.5%増の1兆9182億円、営業利益は同7.2%増の1715億円といずれも過去最高を更新。業績は好調だが、永守氏は「満足できるものではない」と辛口だった。
日本電産は永守氏が28歳だった1973年に京都で創業、一代で築いたオーナー企業だ。4人から始まった小さな“永守商店”は、およそ50年で売上高2兆円を誇る世界一の精密モーター企業へと成長した。
永守氏は本業だけでなく“平成の買収王”と呼ばれたM&A巧者の一面を持つ。60以上の企業を傘下に置いて立て直し、収益化することでグループの規模を拡大。最新の米経済誌『フォーブス』長者番付では日本人で6位(保有資産46億ドル)にランクインしている。