量的引き締めはは間違った政策か
では各国政府、特に米国政府には、どういった対応が求められるのだろうか。
少なくとも、現在発生しているインフレは貨幣の過剰な供給が主な要因でないのであれば、FRBが行おうとしているQT(量的引き締め)、利上げなどの金融引き締めは間違った政策であり、この政策ではインフレを抑えるのは難しい。インフレを抑えるには供給側のショックをやわらげ、インダストリアルチェーンを安定させ、企業の生産、供給を安定させる必要が出てくる。企業サイドでは、主にエネルギー、原材料、部品のサプライヤーに対して価格を安定させる。消費者サイドでは、生活用品、特にエネルギー、食品の供給を安定させる……。
つまり、政府による価格、生産介入を含めたミクロの泥臭い対策が必要だと主張しているわけだ。
社会主義国「中国」の研究者に政策提言をされているようで、その点が気になる方もいるだろうが、リスクを負わなければならない投資家にとっては、結果がすべてである。このままではインフレ懸念が高まり、それこそインフレスパイラルが発生しかねない状況だ。事態は急を要する。
この分析が正しいと考えるのであれば、日本の投資家も、買いポジションを調整した上で、欧米機関投資家の保有比率の高い銘柄を空売りするなどの投資戦略も有効かもしれない。はたしてどうなるか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。