米国のインフレが止まらない。6月10日に発表された5月の消費者物価指数は8.6%上昇。これは前月や市場予想よりも0.3ポイント高く、1981年12月以来の水準だ。3月の8.5%上昇を超えたことで、インフレがピークアウトしていないことがより鮮明となってきた。
これを受けてNYダウは急落、6月13日の終値は3万516.74ドルで引けており、5月20日につけた直近の最安値を割り込んでいる。チャートを見ると、NYダウは2022年1月5日の場中で付けた3万6952.65ドルを天井としてはっきりとした下落トレンドを形成している。
こうした米国の情勢は、困ったことに欧米機関投資家のリスク回避姿勢の強まりなどを通じて日本の株式市場に悪影響を与え、米国金利の上昇などを通じて円安モーメントを加速させる。「米国のインフレはいつ収まるのか」は、日本の投資家にとって非常に大きな関心事だ。
FRB(連邦準備制度理事会)は利上げによってインフレを抑制しようとしているのだが、もし、インフレの主な要因が需要側ではなく、供給側にあるとすれば、利上げによる効果は期待できず、長期的なスタグフレーションに陥る可能性も出てきてしまう。“インフレの要因が何であるか”を知ることは非常に重要である。
この点について、中国のマスコミが興味深い分析を紹介している。21世紀経済報道は6月10日、「今グローバルで起きているインフレ問題について如何に考えるか」と題して華南理工大学の田秋生教授の論考を掲載している。米国に限らずグローバルで起きているインフレのメカニズムを分析している内容だが、米国の状況もよく説明している。ここでは実証分析の部分は除き、ロジックの部分だけを簡単に紹介しておこう。