長年連れ添った配偶者と熟年離婚する人が増えているというが、その際にモメることが多いのが、財産分与だろう。では、その財産が「ペット」の場合はどうなるのか。ふたりで愛した犬をどちらが引き取るかでモメている夫婦のケースを紹介。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
離婚を前提に夫と別居する予定ですが、愛犬のことでもめています。愛犬は結婚してからふたりのお金で購入し、ほぼ半分ずつ出しています。食事の世話は私がしていましたが、散歩は夫が担当していました。ふたりとも愛犬をかわいがっていたので、別居や離婚の際は「自分が引き取りたい」と思っていて、らちがあきません。どのように決めたらよいのでしょうか。教えてください。(49才女性・会社員)
【回答】
別居や離婚にあたって、未成年者の監護権者の指定や親権の帰属をめぐり激しく争われることは珍しくありませんが、ペットの取り合いは、私のこれまでの仕事の経験上ありません。
しかし、ペットは人生の伴侶ともいわれ、わが子同様にかわいがることもありますから、深刻な対立になる可能性はあります。
離婚前提の別居とのことなので、別居の時点と離婚の時点で分けて考えます。ペットは法的には動産です。別居時に持ち出す財産は、協議になります。夫婦一方の資金拠出で取得した物であれば特有財産として引渡請求ができますが、ご説明によると夫婦共有の財産とのことです。
別居によって出ていった側が、共有物を所持している人に引き渡しを請求しても認められないと思います。だからといって黙って持ち出せば、相手の所持を奪ったことになるので、1年以内に占有回収の訴えを提起されると戻さなくてはなりません。充分に話し合いをするしかありません。
別居後に離婚になれば、夫婦が実質的に共有しているペットも離婚に伴う財産分与の対象の1つとして判断されます。