このまま実家を維持すれば、将来、子供や孫に苦労をかけると気づいたんです。そこで、2度目のリフォームをすることにしました。売るにしろ貸すにしろ「もう少しきれいで使いやすい方がいいだろう」と考えたんです。ただ、私の考えとは裏腹に、ユニットバスへの交換やフローリングの張り直しなど250万円ほどかけたのに、査定の結果は、「築年数が古いから建物の価値はゼロ。土地の価値だけで200万円」。めまいがして倒れそうになりましたよ。
更地だと売りやすいらしいんですが、解体にも500万円ほどかかる。こっちは2回のリフォームで、計600万円かけちゃった後なんですよ(笑い)。更地にする踏ん切りはつかないし、赤字を出すわけにもいかないと腹をくくって、香川県が運営する「空き家バンク」に希望額600万円で登録し、買い手が付くのを待ちました。
担当者のかたには600万円は厳しいと伝えられていたのですが、幸い、3か月ほどで購入の問い合わせが入り、命拾いしました。
健康ランドに1週間泊まり込み
〈2017年11月に実家の売却が決まり、ホッとしたのもつかの間、実家じまいの“第2ラウンド”が始まった。3か月後の引き渡し期限までに、遺品の整理や不用品の処分をすべて終えなければならない〉
最初、下取り業者さんに売れそうなものがないか見積もりを頼んだんですけど、「この家に価値のあるものはありません」ときっぱり匙を投げられて(笑い)。それでやっと物を処分する決心ができました。
松本家は先祖代々「物を捨てられない性分」なんですよ。遺品整理をしていたら、祖母が使っていた明治時代のミシン、古い紙幣、百人一首のかるた、果ては下着まで出てきました。母が遺した着物や洋服だけでも、100着くらいあります。
私の物も、何から何まで捨てずに取ってありました。小学生のときに使っていたリコーダー、ハーモニカ、彫刻刀や、私が出演したテレビ番組を録画したビデオテープ、ポスターなど、とにかく全部ありました。
実家の整理をしていると、懐かしくてつい思い出にひたってしまい、片づけが進まない、進まない。引き渡し期限の間近には、意を決して地元の1泊2500円の健康ランドに1週間泊まり込みましたよ。ほかのお客さんたちと雑魚寝して、朝8時から夜11時まで作業して、また健康ランドに泊まる、という生活でした。もちろん松本明子だってバレてましたよ。そのうち、「またいらしたんですか?」って顔もされました(苦笑)。
物を処分するのは本当に難しかったのですが、「息子が必要だと思うかどうか」を考えたときに、要らないだろうと判断したものは、基本的に譲るか、捨てるかすることにしました。最終的に、廃棄した家財や遺品は2tトラック10台分になりました。