コロナ禍で外食産業は壊滅状態。だが善戦を続けたのが回転寿司だ。帝国データバンクによれば、大手チェーン中心の国内回転寿司市場(2021年、売上高)は、10年前の1.6倍、前年から約600億円増の7400億円超になるという。
「一皿100円から」という庶民的な価格への吸引力はコロナ禍でも衰えず、週末になれば多くの家族連れでにぎわった。収入が減っても家族揃って行ける数少ない“ハレ”の食事が回転寿司なのだ。この7400億円市場のパイをめぐり、利益確保に各社がしのぎを削っている。
だが、そこにウクライナ戦争に端を発する原油高、輸入原材料の調達不安が襲った。インパクトをもって受け入れられたのは最大手スシローの発表。10月から多くのメニューの値上げを5月9日に表明したのだ。
スシローは10月から税込110円の黄皿を120円にすると発表。これにより創業以来38年続いた「税別100円」の寿司に幕を下ろす。スシロー広報担当者はこう説明する。
「原材料費、人件費、地代・家賃、建築費など様々なコストが高騰していることが大きな要因です。そのなかで“うまい寿司”をご提供し続けるため、やむなく価格改定に至りました」
実は、低価格商品にはウクライナ戦争以前から値上げ圧力が高まっていた。回転寿司評論家の米川伸生氏が解説する。
「同社に限らず税別100円で出ていたマグロやイカなどの定番ネタは仕入れ値が以前から高騰、儲けがまったくない商品だった。そこに戦争や原油高、円安など顧客に値上げの理解を得やすいタイミングが来たということです」
くら寿司、かっぱ寿司は取材時点で値上げの予定はないとしたが、はま寿司は6月26日から1皿308円の商品群を319円に値上げすると発表。ただし、110円、165円の主力メニューは据え置きにする。