相続を巡る問題において、紛争解決のプロとしての役割が期待されるのが「弁護士」だ。まこと法律事務所の弁護士・北村真一氏が解説する。
「弁護士が依頼を受ける相談として生前の『遺言書の作成』や、死後に相続人同士の遺産分割を巡る話し合いがまとまった際の『遺産分割協議書の作成』などもありますが、なかでも弁護士にしかできないのが、話し合いがまとまらない場合の『遺産分割協議の代理』や、協議がまとまらない場合の『遺産分割調停や訴訟の代理』です。
遺産分割協議では相続人全員の合意が必要になり、当事者同士の話し合いだけで全員が納得する結論を出すのが難しいことが多い。弁護士が代理人になって協議にあたるわけです」
“トラブル対応”でこそ、弁護士の本領が発揮されるわけだ。ただし、その役割は「トラブルが起きてから」に限定されるわけではないという。
「親が元気なうちから子供と一緒に相続対策をしたいという相談が増えています」と話すのは、山下江法律事務所の弁護士・加藤泰氏だ。
「たとえば遺言書の作成は弁護士以外の専門家でも相談を受けられますが、弁護士は“最悪の相続争いに発展したらどうなるか”を経験しているので、それを踏まえた視点でアドバイスができます。紛争になった時の代理人は弁護士しかできないから、他の専門家にはない経験値があるわけです」
加藤弁護士は遺言書作成を依頼した場合の費用について、「財産の引継ぎ先を指定する条項を主とした定型的な内容なら11万円で受けており、依頼内容が複雑な場合は額が上積みされます」とした。
「私たちの事務所では相続税などに問題があれば税理士と、不動産に問題があれば不動産会社や司法書士らと、といった形で様々な専門家と連携して対応にあたりますが、相続問題で弁護士を中心に対応したほうがよいと思われるのは相続人同士の仲が悪いケースです。相手との信頼関係がないため、話し合いがうまく進まないことが多いのです」(加藤弁護士)
※週刊ポスト2022年7月1日号