「専門家vs専門家」になると…
認知症対策としては、親が財産の大部分を家族に信託し、運用や管理などを委ねる「家族信託」を弁護士がサポートするケースもある。遠藤家族信託法律事務所所長の弁護士・遠藤英嗣氏が言う。
「家族信託は後見制度を補い遺言に代わる契約として位置づけられます。判断能力があるうちに約束事を決めて、信頼できる家族に財産の管理を託すのです。遺言書を巡って争いが起きることもあるので、そうした場合でも財産が確実に承継されるように信託契約を締結し、将来の争いをできるだけ少なくするサポートをしています。
家族信託のメリットのいま一つは、歳を重ねて認知症を発症し、自分で財産管理ができなくなるリスクに備えるというものです。さらに遺言だと認知症になってから書き直してしまう人がいますが、家族信託は契約ですから一方的には撤回はできないのです。
私たちの事務所で扱う場合、費用は依頼内容によって変わってきますが、信託契約締結の最低手数料で28万円+消費税、セットとなる遺言書作成や任意後見契約が含まれると報酬がプラスされていくかたちになります」
遺産分割協議では他の相続人も専門家を立てることがあるが、南青山M’s法律会計事務所代表の弁護士・眞鍋淳也氏は「不動産の評価が問題になるケースが多い」と指摘する。
「不動産には評価の方法が複数あり、“不動産を相続する長男が自分の知り合いの税理士に計算させて、評価額を安く見せかける”といったケースがあります。不動産の相続税評価額(土地=路線価、建物=固定資産税評価額)は、時価(市場価格)よりも安い。相続税評価額をもとに遺産分割協議をまとめてすぐに売却すれば、不動産を相続した長男が得するわけです。長男が公平な評価額のように示したものが私たちの事務所に持ち込まれ、“時価より大幅に低いので評価額を争いましょう”となることもあります」