そこで一念発起。この1年のうちに新しいことにチャレンジすると決めた。何かないかと探している最中、夫が著名人の対談を聞きながら手書きのメモを作り、その過程を動画にしたものをSNSに配信しているのを見た。
「この動画が、対談した本人にリツイートされたこともあり、1日に3000回も再生されたんです。隣で一部始終を見ていた私は反響の大きさに驚きつつ、“こんなに簡単なら、私にもできそう”と思いました。イラストや文字がうまい方ではないし、iPadも使ったことはありませんでしたが、夢中になれそう、楽しめそう、という直感が働きました」
早速、少し前に始めたばかりの自身のSNSに、自己流で作った「メモレコ」をアップ。これを毎日続けていくうちに、「どうやって作るんですか?」などと、フォロワーから質問されるようになったという。
「そんなフォロワーさんたちの期待に応えたくて、翌2月には教えたい人と学びたい人をつなぐプラットフォーム『ストアカ』に登録。『メモレコ』の講座を開設して、講師デビューを果たしました」
専業主婦であることも、資格の有無も関係なく、“好き”を“仕事”として成立させたのだ。
資格がないと働けない、わけじゃない
「実は、『メモレコ』という造語も作り方も、夫が生み出したものなんです。私はそれをもとに発展させただけ。ストアカも、先んじて夫が副業で講座を開いていたので、“自分にもできるかも”と挑戦しました。だから、すべてのきっかけは夫なんです(笑い)」
しかしいまや、先駆者である夫を超え、みっちゃんのオンライン講座の受講者は累計180人以上に。さらに、
「字やイラストに温かみがあるから」
と、デジタル書籍の表紙やポスターなどの制作依頼も舞い込むようになった。現在は子供の成長記録や、個人事業主のPR用「メモレコ」を制作しつつ、講演会などもこなしており、収入は手取りで月10万円程度になったという。今後も、家庭を大事にしながら、できるだけ依頼に応えていきたいと意気込む。
「専業主婦の頃は、医療事務などの資格がないと働けないと思いこんでいました。でもそうじゃない。資格や仕事の実績のない私でも、これだけ人に喜んでもらえる。PTAや幼稚園の役員で培ってきたコミュニケーション力もお客さまやSNSのフォロワーさんとのやりとりに生きています。何が役に立つかわからないものですね」
コロナ禍などによる不景気が続くいま、どこかの会社で雇ってもらおうとするだけでなく、こうした“好き”を仕事にする“プチ起業”こそ、主婦が資格やブランクを気にせず働ける活路となりそうだ。
【プロフィール】
お金の専門家・菅井敏之さん/現・三井住友銀行に勤めた後、48才で退職後は、銀行やアパート経営の経験と知識を生かして講演活動などを行う。近著に『新・お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム)がある。
メモレコみっちゃん(38才)/9才、7才、2才の母。専業主婦だったが、手書き文字やイラストを駆使してメモを効果的に見せる動画「メモレコ」の制作および、その作り方を教える講師に。
取材・文/桜田容子
※女性セブン2022年7月7・14日号